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青森地方裁判所 昭和24年(行)34号 判決

原告 野坂千代吉

被告 青森県知事

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「被告が昭和二十四年十月八日従前の宅地青森市大字浦町字橋本十一番の四号四十一坪四合二勺に対し同市大字古川字美法十番の一号宅地五百十五坪中三十六坪を換地予定地に指定した処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求の原因として、

「原告は昭和二十一年一月一日訴外今淵正太郎からその所有の青森市大字古川字美法十番の一号宅地五百十五坪(別紙図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(イ)点を順次直線を以て連結する範囲内の地域)中百二十坪(同図面(イ)(ロ)(リ)(ル)(イ)点を順次直線を以て連結する範囲内の地域)を賃借し、ここに製パン工場並びに店舗を建築しようとしてその周囲に板塀を繞し資材を集積し準備をしていた。

しかるところ被告は青森市特別都市計画事業における土地区劃整理のため特別都市計画法第十三条により昭和二十四年十月八日訴外折笠亀五郎従前所有の同市大字浦町字橋本十一番四号宅地四十一坪四合二勺(その大部分が右区劃整理の結果道路敷地となるところの所謂潰地)に対し、原告の賃借地である右百二十坪中三十六坪(同図面(ヲ)(ヌ)(ル)(ワ)(ヲ)点を順次直線を以て連結する範囲内の地域)を換地予定地に指定し、同日その旨を右今淵正太郎及び折笠亀五郎に通知した。

しかし右換地予定地の指定処分には次のような瑕疵がある。

(一)  被告は右のように換地予定地の指定をしたがその旨を換地予定地の賃借権者たる原告に通知しなかつたから右処分は特別都市計画法第十三条に違反する。

(二)  原告の右賃借地百二十坪は右換地予定地指定の結果八十四坪に減少するからその減歩率は三割である。これは右土地区劃整理における換地予定地指定の平均減歩率一割七分を著しく超過するものであり、従前の所有地四十一坪四合二勺に対し三十六坪を指定したところの折笠亀五郎に対する右換地予定の指定に比しても苛酷であることが明である。しかのみならず被告はさきに原告の賃借地中北側四十六坪一合九勺の部分(別紙図面(イ)(ロ)(チ)(ト)(イ)点を順次直線を以て連結する範囲内の地域)を右土地区劃整理上道路用敷地に編入しているのであるから本件賃借地中原告が実際に使用できる部分は三十七坪八合一勺(別紙図面(ト)(チ)(リ)(ヌ)(ヲ)(ワ)(ト)点を順次直線を以て連結する範囲の地域)に過ぎないのである。されば原告が最初折角企図したところの製パン工場店舗等の建築は到底不可能であつて原告の生業を剥奪するような結果となるから右指定処分は耕地整理法第三十条に違反する。

よつて原告は右のような違法を理由として被告のなした本件換地予定地指定処分の取消を求めるため本訴に及ぶ。」

と陳述し、被告主張事実に対し、

「原告は昭和二十四年五月十日本件換地予定地指定処分を不服とし異議の申立をしたから本訴は適法である。又本件賃借権が登記したものでないことは認めるが原告はこれにつき特別都市計画法施行令第四十五条による届出をしたのである。仮りに右届出がなかつたとしても原告に換地予定地を指定した旨通知しなかつたことは違法である。」

と述べた(立証省略)。

被告訴訟代理人は本案前の抗弁として「原告の訴を却下する。」との判決を求めその理由として、

「原告は本訴提起前本件において取消を求めている被告の処分に対し訴願の裁決を経ていないから本件訴は不適法であつて却下せらるべきものである。」

と述べ本案について主文と同趣旨の判決を求め答弁として、

「原告主張事実中、被告が原告主張日時その主張のように折笠亀五郎従前所有の宅地に対し今淵正太郎所有の宅地を換地予定地(その部分を原告が賃借しているとの点を除く)に指定しその旨を右折笠亀五郎及び今淵正太郎に夫々通知したこと、被告が右のように換地予定地の指定をしたことを原告に通知しなかつたことはいずれもこれを認めるがその余の事実はすべてこれを争う。

仮りに原告がその主張のように今淵正太郎から字美法十番の一号宅地中百二十坪を賃借し使用していたとしても (一) 右賃借権については登記がないばかりでなく特別都市計画法施行令第四十五条による届出がなかつたのであるから被告において右賃貸借関係を知る由もないのである。従つて被告は原告に対し本件処分につき通知すべき何等の義務もなくかかる通知を欠くからといつて右処分が違法となるわけのものでもない。(二) 又被告は今淵正太郎従前所有の前記字美法十番の一号宅地に対し換地予定地を指定したのであるが原告の右賃借権は前述のとおり無登記無届であつたため原告がその換地予定地につき使用収益することのできる範囲を指定しなかつたのである。これは特別都市計画法施行令第四十五条に順応した当然の帰結である。しかし特別都市計画法による換地は換地認可の告示の日から従前の土地と看做され従前の土地上の権利は法律上当然換地上の権利に移行するのであつて、換地処分が効力を生ずるまでの経過的措置としてなされる換地予定地の指定の効果もこれと同様に考えるべきものであるから原告の賃借権は今淵正太郎従前所有の右十番の一号宅地に対する換地予定地上に移行し消滅してしまうのではない。無登記無届の賃借権者である原告は右換地予定地上に賃借権を行使し得べき範囲の指定を受けることができないのであるから専ら今淵正太郎との話合によつてその範囲を定めるべきである。その話合によりその範囲が原告の従前の賃借地に比して広大或は狭少なものであつたとしても被告の関知するところではない。」

と陳述した(立証省略)。

三、理  由

一、先ず被告の本案前の抗弁について考えるに、行政庁が特別都市計画法に規定する事項についてなした処分を違法としその取消を求める場合は訴願の裁決を経ないで直接裁判所へ出訴することもできるとみるのが相当であるから被告の特別都市計画法による換地予定地の指定処分を違法としその取消を求める本訴はこれが提起前訴願の裁決を経る必要がないのであつて被告の右抗弁は理由がない。

二、よつて進んで本案につき判断する。

被告が青森市特別都市計画事業における土地区劃整理のため特別都市計画法第十三条により昭和二十四年十月八日折笠亀五郎従前所有の宅地同市大字浦町字橋本十一番の四号四十一坪四合二勺に対し今淵正太郎所有の宅地同市大字古川字美法十番の一号五百十五坪(別紙図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(イ)点を順次直線を以て連結する範囲内の地域)中三十六坪(同図面(ヲ)(ヌ)(ル)(ワ)(ヲ)点を順次直線を以て連結する範囲内の地域)を換地予定地に指定しその旨を右折笠亀五郎及び今淵正太郎に通知したことは当事者間に争がない。しかるところ成立につき争ない甲第一、二号証及び証人今淵正太郎の証言を綜合すると原告は昭和二十一年一月一日所有者今淵正太郎から右十番の一号宅地五百十五坪中右換地予定地を含む百二十坪(別紙図面(イ)(ロ)(リ)(ル)(イ)点を順次直線を以て連結する範囲内の地域)を期間五年賃料一箇月一坪につき金七十銭と定めて借受けたことが認められるから原告は右換地予定地指定当時その予定地の賃借権者であつたということができる。

(イ)  そこで被告は右の如く換地予定地を指定した旨原告に通知すべきであつたかどうかについて考えてみるに、特別都市計画法第十三条を一見すると換地予定地を指定したときその旨を換地予定地のすべての賃借権者に通知すべきが如くであるが、特別都市計画法施行令第四十五条によると換地を指定する場合従前の土地に対する無登記でしかも同条による届出のない賃借権に対してはその換地につき賃借権の目的たる土地を指定しないのであつてこのことは換地処分が効力を生ずるまでの経過的措置としてなされる換地予定地の指定においても同様に考えなければならないから換地予定地を指定する場合も従前の土地上の登記のないしかも同条による届出のない賃借権に対してはその換地予定地にその権利を行使し得べき土地の範囲を指定しないのである。さればかかる賃借権者に対しては換地予定地を指定した旨の通知を要しないものとみるのが相当である。換地予定地の賃借権は右と同一区画整理地区内の賃借権でありしかも他方その賃借地に対し換地或は換地予定地が指定されるときはそれがとりもなおさず従前の土地の賃借権と区別すべき何等の理由もなく土地区画整理の円滑迅速且つ画一的な施行上から考えてみても換地予定地を指定する場合その換地予定地についての無登記にして且つ前記法条による届出のない賃借権に対してはその旨の通知を要しないものと解するのが相当である。しかるところ原告の右賃借権が無登記のものであることは原告の自認するところであり証人望月倫一の証言によるとこれにつき原告は特別都市計画法施行令第四十五条による届出をしていないことが明であるから被告は原告に対し換地予定地を指定した旨の通知をなす必要がないのである。かかる通知を欠くことを理由として本件換地予定地指定処分を違法となす旨の原告の主張は結局採用し難い。

(ロ)  換地の経過的措置としてなされる換地予定地の指定について換地指定に関する規定である耕地整理法第三十条が準用されるものと解すべきところ原告は右換地予定地の指定の結果原告の右賃借地は八十四坪に減少しその減歩率は三割であつて耕地整理法第三十条に反する旨主張するので考えるに、同法所定の趣旨は従前の土地の地積等を標準として換地(換地予定地)を指定すべきことを規定したに過ぎないのであつて換地(換地予定地)の所有者又は関係者が従来使用収益していた地域と換地(換地予定地)指定により使用収益ができなくなつた部分を除いた地域との比較標準を定めたものでないから右主張は理由がない。よつて原告の本訴請求はすべて理由がないからこれを棄却すべきものとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 工藤健作 中島誠二 野原文吉)

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